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呼吸筋トレーニングで強くなる! 
トライアスリートのための呼吸筋トレーニングガイド

ちょっとした瞬間時間や寒い日の室内などで、呼吸筋を鍛えれば、実力アップにきっとつながります。今回はトライアスリートのための呼吸筋トレーニングを紹介。陸上競技出身で大学のコーチなどを務め、トライアスロンにも関わる、東京工芸大学の山本正彦准教授に話を訊きました。

指導=山本正彦(東京工芸大学) イラスト=中村知史

上手な呼吸=深い呼吸

呼吸とは何かから考えていきましょう。ひと言でいえば、酸素と二酸化炭素のガス交換です。そのなかで外呼吸は大気の酸素を取り込み、二酸化炭素を体外へ排泄。内呼吸は、細胞の代謝に必要な酸素を、血液を介して供給し、細胞における代謝産物の二酸化炭素を血液へ放出します。普通の大気状態では酸素が20.93%含まれていますが、吐く空気の酸素濃度は、15~18%。体内で利用された酸素は3~6%に過ぎません。効率を改善するために、体内での利用率を上げることはできませんが、換気を多くして、空気をたくさん取り入れることは可能です。実は吸った空気がすべて肺に届いているわけではありません。換気の過程で、気道には肺へ届かない空気が残ります。死腔量と呼ばれ、日本人は通常150ml程度と言われています。肺換気量(肺そのものに届く空気)は、この死腔量を差し引いて考える必要があります。

肺換気量を多くするには、浅い呼吸ではなく深い呼吸でなくてはなりません。下手な呼吸、つまり浅い呼吸では肺換気量をかせげません。上手な呼吸とも言える一回換気量が多い、深い呼吸が理想的なのです(表1)。そして換気を多くするのに一役買うのが、呼吸筋です。肺自らは収縮や弛緩することができないため、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の助けが必要になります(図1)。

呼吸筋の疲労がパフォーマンス低下に

以前は呼吸器疾患者や高齢者を除く一般健常者において、肺換気能は持久性運動の制限因子にならないといわれてきました。肺機能や換気能力を高めても、持久系運動のパフォーマンス向上にはつながらないと考えられていたのです。なぜなら、安静時の最大換気量(MVV)は運動中の分時最大換気量(VEmax)よりも高い値であり、最大運動時でも換気能力に余力があることが指摘されていたからです。

しかし呼吸筋も他の骨格筋同様に疲労します(※1)。特に持久性運動によって呼吸筋が疲労する報告が数多くされました。また呼吸筋を疲労させたあとの持久性運動はパフォーマンスが低下することも示されました(※2、※3)。こうした研究から、換気能力が持久性運動の制限因子になりうる可能性が指摘されるようになったのです。

なぜ呼吸筋を鍛えるのか?

運動中の呼吸筋の酸素消費量は、運動強度が上がるほど増えるとされ、最大運動時の酸素消費量は全酸素消費量の24.6%にもなる計算がされています(※4)。呼吸筋がいかに多くの酸素を必要としているかが分かります。サイクリストを対象に、ベンチレーターを用いて呼吸を補助する実験を試してみたところ、[1]脚の主導筋は血管収縮し、血流量が減少した(※5)[2]自転車エルゴメーターでの運動時間が延長した(※6)[3]最大運動時の換気に対し、機械的な補助をすると種堂筋の血流量が増加し、逆に換気を制限すると血流量が低下した(※7)との報告があります。これらは呼吸補助が運動パフォーマンスに影響を及ぼしていることを示しているのです。 運動強度が高くなるにつれて、毎分換気量も増えていきます。その結果、呼吸筋が必要とする酸素消費量も増加します。特に高強度の運動で、呼吸筋が主導筋から血液を奪うのであれば、主導筋の活動は制限される可能性が考えられるのです。そこで呼吸筋の相対的な仕事量を減らしてあげればいいのですが、そのためにはトレーニングをして強化してあげればいいのです。

横隔膜は呼吸筋の中で最大の筋で、吸気時に収縮するため、吸気筋とも言われます。横隔膜を鍛えるには、抵抗負荷を用いた方法があります。鍛練されたボート選手に、最大吸気口腔内圧(PImax)の50%を連続的に30呼吸させる抵抗負荷トレーニングを、1日2回11週にわたって行わせた研究があります(※8)。PImaxは45.3%増加し、ローイング・エルゴメーターによるボート漕ぎの6分間タイムトライアルで距離が3.5%延び、5000mのタイムトライアルでは36秒短縮しました。呼吸筋トレーニングでパフォーマンスの向上が見込めることが、多くの研究者の意見ですが、否定する報告もあります。競技力や種目特性(特に、フォームや姿勢など)が影響している可能性も否定できません。

トライアスロンでも効果的な呼吸筋トレーニング

シドニー五輪のトライアスロン金メダリストのブリジット・マクマホン選手は、呼吸筋トレーニングを好んでいたといいます。長時間の運動で呼吸筋が疲労するとの報告があるので、トライアスロンの競技特性から、鍛えておくことがパフォーマンス向上につながると考えられます。スイムは呼吸が制限されるので、換気量を増すトレーニングは有効に働くでしょう。アテネ五輪の水泳自由形800mで金メダルを獲得した柴田亜衣選手は「泳ぐときに呼吸数を減らすトレーニングを取り入れた」と話しています。つまり1回の換気量を増やそうとしていたことを意味します。前傾姿勢をとるバイクも腹腔内圧が高くなるので、横隔膜も動かすためにより筋肉を使います。ランでも脚の疲労が先に来なければ、呼吸筋の働きが重要になります。 スイムでは呼吸の回数を減らして、換気量を高める。バイクでは上り坂のインターバルで過換気を行う。ランではまず呼吸のストレッチングである深呼吸を意識し、インターバルやレベティションなどのトレーニングで換気を刺激する。普段のトレーニングにこうした工夫をすることから始めるといいでしょう。 練習量はもちろん必要ですが、呼吸筋を鍛えることもパフォーマンス向上に役立ちます。今月のルミナセレクションで紹介する呼吸筋トレーナー「パワーブリーズ」などを使って、簡単ところから試してみてはいかがでしょうか。

※1 RoussosとMacklem、1977年 ※2 Madorら、1991年 ※3 Martinら、1982年 ※4 0tis、1954年 ※5 Harmsら、1998年 ※7 Harmsら、2000年 ※8 Volianitisら、2001年

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